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契約書の「合意管轄」とは【余計な争いを防ぐためにきっちり定めましょう】

投稿日:2019年8月10日 更新日:

契約書の「合意管轄」とは【余計な争いを防ぐためにきっちり定めましょう】

契約書を読んでいると、必ず出てくる規定として、「合意管轄」に関する規定があります。たまに、そのような規定が無い契約書もありますが、もしあなたが契約交渉中の契約書がそうならば、しっかりと「合意管轄」の規定を定めるべきです。今日は、そんな「合意管轄」について述べてみたいと思います。

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契約書の「合意管轄」とは

契約書に定める「合意管轄」とは、契約当事者の間で争いが生じた際に、どこの裁判所で裁判や解決を行うかを定める規定です。例えば、次のような文章(条項)があったりします。

第15条(合意管轄) 
甲および乙は、本契約から生じる訴訟の第一審の専属的合意管轄裁判所を東京地方裁判所とすることに合意する。

この合意管轄の規定を定めておかないと、場合によっては、複数の裁判所に訴えを提起することが可能です。そうなると、お互いがお互いにとって都合の良い裁判所での解決を主張することになり、本題の争いの前に、そもそも「裁判所をどこにするのか」で揉めることになりかねません。

ちなみに、上記条項において、「専属的」という言葉が無い場合、裁判所を一つに定めることができません。このため、「専属的」という言葉が無い合意管轄の規定はあまり意味が無いといえると思います。

合意管轄の規定で定められること

合意管轄の規定で定められることは、第一審の場所(裁判所)のみであるため、第二審以降については、「どの裁判所で争うか」を決めることはできません。また、知的財産権に関わる争いについては、東京地方裁判所または大阪地方裁判所に強制的に移される場合があるので注意が必要です

参考:裁判所のホームページ

ちなみに、上記の場合、名古屋高裁以東に所在する地方裁判所が管轄の場合は、東京地方裁判所に移され、それ以外の場合(大阪高裁以西に所在する地方裁判所が管轄の場合)は大阪地方裁判所に移されます。

合意管轄裁判所は自社の近くに規定すべき

契約書において合意管轄裁判所は、自社の近くに定めておくべきです。裁判を行うとなれば、当然弁護士を雇わなければなりませんが、彼らは時間給なので、拘束する時間(移動時間など)が増えれば増えるほど、費用が高くなってしまいます。また、交通費自体もかさむことになりますから、訴訟費用を安くするという観点から、自社(自分)の近くに定めておくべきです。

また、裁判は一種の「非常事態」なわけですから、心理的にかかる負担も大きいです。それを考えると、遠い見知らぬ土地での裁判よりも、自分が良く知る土地での裁判所の方が、心理的な負担は(多少)少なくなると思います。

とはいえ、契約交渉をしていると、合意管轄の規定をどうするかで、揉めることもしばしば有ります。例えば、こちらは「東京地方裁判所がいい」と主張し、相手は「いや、大阪地方裁判所がいい」と主張するような場合です。

こんな場合は「被告地主義」を落としどころにするのも一つの手です。つまり、被告側(訴えられる側)が所在する裁判所を合意管轄裁判所とするのです。これにより、どちらにとっても「自社が被告になったときには、自社の近くの裁判所で裁判できることになる」ため平等な定めになります。ちなみに、被告地主義の条項の例としては、下記があります。

第21条(合意管轄) 
本契約から生じる訴訟の第一審の専属的合意管轄裁判所は、次の各号の通りとする。
(1)甲が被告となる場合は東京地方裁判所。
(2)乙が被告となる場合は大阪地方裁判所。

(まぁ、交渉事なので、「被告地主義」でさえも受け入れない相手もいたりするのですが・・・)

まとめ

さて、合意管轄に関してまとめると、次の通り。

  • 合意管轄の規定は、契約当事者の間で争いが生じた際に、どこの裁判所で裁判や解決を行うかを定める規定。
  • 決められるのは第一審の裁判所のみ。
  • 知的財産権に関する裁判については、強制的に東京または大阪地方裁判所で裁判を行うことになる場合がある。
  • 合意管轄の規定は、自社の近くの裁判所にすべき。
  • 契約交渉で合意管轄について揉めたときは、「被告地主義」を落としどころにするという考え方(交渉の仕方)もある。

それでは、今日はこのへんで。読んでいただき、有難うございました。

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